2022/03/18 止まらぬ資材・燃料高騰/メーカーら、価格転嫁の動き強まる

【建設工業新聞  3月 18日 1面記事掲載】

建設産業に関連する資機材や燃料の高騰に歯止めがかからなくなっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を契機に、木材や鉄鋼、石油関連製品、燃料などの価格が上昇。メーカーらは自助努力が限界と判断し価格転嫁の動きを強めている。先が読めないウクライナ情勢も暗い影を落としており、コストやサプライチェーン(供給網)により大きな影響を与える可能性がある。

経済調査会(森北佳昭理事長)が10日時点でまとめた東京の資材や燃料の市況を見ると、構造用材料の一つ「異形棒鋼」の価格(1トン当たり)は前月に比べ5000円高い10万1000円となった。価格が10万円台になったのは14年ぶり。前年同月との比較では2万3000円上昇している。

重機などに不可欠な軽油も価格の高騰、高止まりが続く。1キロリットル当たりの価格(ローリー渡し、同日時点)は12万1000円で、前月から5000円上昇。世界的な資源高は流通価格にも大きく影響し、H形鋼やコンクリート型枠用合板、フロート板ガラス、CVケーブルなど多様な資材の価格が上昇傾向にある。

同会によると、過去1年の市況の上昇幅は「リーマンショック直前に中国の建設市場が旺盛だった時以来」(土木第一部)という。当時に比べサプライチェーンの国際化が進展し「あらゆる資材や燃料が高騰し(建設業などへの)影響も大きい」と見ている。

主要な建設資材であるセメントはメーカー各社が値上げを表明しており、生コンクリートの価格が現時点の横ばいから上昇に向かう可能性は否定できない。

資機材などの価格上昇やサプライチェーンの停滞は建築工事を中心に工期遅延や一時停止といった形で影響が出始めている。建設各社の業績にも影響を及ぼすだろう。ある金融関係者は「物の価格が上がり受注競争が再燃し、利益率が落ちている。コストを転嫁できる交渉力があるかどうかが重要になる」と指摘する。

不動産協会の菰田正信理事長は11日の会見で「コストに(資材高騰の)余裕を見た分を最終需要者に転嫁できるかが最大の課題になってくる」と強調した。

苦境を前に業界の動きも活発化しつつある。14日に開かれた国の中央建設業審議会(中建審)で、日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長は国土交通省に対し、コスト上昇分の適切な価格転嫁を求め民間発注者にも働き掛けるよう求めた。国交省の鎌原宜文不動産・建設経済局建設業課長は「政府全体で問題意識を持っている」と述べた。

地域建設業団体の幹部は、「今回のような資材高騰は初めて経験する事態。放っておけば倒産という最悪の事態を招きかねない」と警戒を強める。

産業界を挙げて目指している賃上げの好循環を止めないためにも、資機材などの価格高騰にどう対処していくか、動きを注視する必要がある。

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