2022/03/30 国交省/下請取引で元請に7項目改善要請、法定福利費内訳明示など

【建設工業新聞  3月 30日 1面記事掲載】

国土交通省は主要な元請企業を対象にしたモニタリング調査の結果を明らかにした。下請取引の実態把握を目的に、適正な手順や内容で契約が行われているかどうか各社の支店や現場所長などを直接ヒアリングして確認。法定福利費に着目すると、内訳明示が不十分だったり適正額が設定されていない恐れがあったりするケースが一定割合あった。結果を踏まえ、七つの改善すべき事項を調査対象企業に28日付で通知した。

継続実施中のモニタリング調査の2021年10~12月分の結果をまとめた。完成工事高上位の元請を中心に20年度の受注工事からヒアリング対象を無作為に選定。民間工事や地方自治体発注工事も含まれる。調査件数は非公表。

調査で不適切な傾向が強かった事項を抽出し、▽標準見積書の活用などの働き掛け▽契約書や見積書での法定福利費の内訳明示▽適正な社会保険への加入を確認できない作業員の現場入場▽合理的根拠のない一方的な値引き(指し値発注)▽技能者の賃金上昇を阻害する単価設定▽労務費相当分の現金支払い▽適正な施工体制の確立-の7項目で改善や配慮を要請した。

調査結果によると、標準見積書の提出を下請に働き掛けているのは35%。企業単位を対象とする下請取引等実態調査の数値(21年度調査で66・3%)と隔たりがあり、支店・現場の対応実態があらわになった。法定福利費を内訳明示していない不適切事例は5%。内訳明示している場合も、最も適切な計算式の「就労予定人数×労務単価×法定福利比率」は約1割で、算定根拠が不明なケースが約4割あった。

契約金額に占める法定福利費の割合が著しく低い事例は18%。契約金額から大幅な一括値引きが行われ、実質的に法定福利費や労務費を賄えないような事例も28%あった。いずれかの事例を確認した割合を公共工事の落札率別に整理すると、落札率90%以上で13%、90%未満で22%。落札率が低くなると下請や技能者にしわ寄せが及ぶ傾向が強まる結果となった。

モニタリング調査の1~3月分は別途まとめる。労務費や原材料、燃料のコスト上昇分の価格転嫁の円滑化を推進する政府方針を踏まえ、スライド条項の設定状況や価格転嫁の協議状況を重点的に聞いた。

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