2022/06/01 厚労省/特定元方事業者の巡視規制緩和へ、デジタル技術23年度適用目指す

【建設工業新聞  6月 1日 1面記事掲載】

厚生労働省は2023年度からの適用を目指し、労働安全衛生法(安衛法)で特定元方事業者に義務付けている作業場所の「巡視」規制の緩和を検討する。デジタル技術を活用し、遠隔地でも現場状況を確認できる環境を整える。巡視規制の緩和は、政府が策定する規制の「一括見直しプラン」に盛り込まれる予定。プラン決定後、厚労省が労使双方の関係団体にヒアリングを行い、デジタル活用の可否を判断。並行して、ウエアラブルカメラや画像認識処理など使用可能な技術を検討し、22年度中に成果をまとめる。

デジタル技術の活用を認める場合、23年度にも省令改正や通知・通達など必要な措置を講じるという。

建設業などは元下の重層構造によって現場内で複数の請負人が入り組んで作業する。作業員が作業中の建機に激突したり開口部から転落したり、請負人同士の連絡調整不足が原因で労働災害が発生する事例があった。このため特定元方事業者による1日1回以上の巡視を安衛法や労働安全衛生規則(安衛則)で規定している。巡視によって作業間の調整状況や、建機・設備の安全性などを確認。不安全な作業や危険な状況を発見した場合、即座に改善を求めたり、作業停止の指示といった労災防止措置を講じたりする。

政府が目指すデジタル技術による規制改革の姿は▽情報収集の遠隔化(人が評価する)▽判断の精密化、自動化・無人化(AIなどが評価する)-の2段階。

特定元方事業者による巡視規定ができた背景を踏まえると、見直しによって安全衛生水準を低下させないことが原則となる。デジタル化には現場で実施する場合と同等の情報が得られることや、速やかに労災防止措置を実行できるといった機能が求められる。厚労省はウエアラブルカメラを使用した遠隔地からの情報収集、定点カメラと画像認識処理による不安全行動の把握などを想定。デジタル技術で得た情報を基に判断や具体の措置を講じるのは、従来通り特定元方事業者になる見込みだ。

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