2022/06/15 厚労省/水道安全確保へ検討着手、技術基準改正も視野

【建設工業新聞  6月 15日 1面記事掲載】

厚生労働省は1月に発覚した水道管への不適切な防腐用塗料の使用問題を受け、水道の安全確保に向けた検討に入った。14日に有識者検討会の会合を東京都内で開催。有識者が使用を禁止または推奨する薬品などのリストの充実や、製品の使用原料を明らかにする仕組みの構築などを提案した。厚労省が有識者の意見を基に論点を整理し、対策を立案する。水道施設の技術基準(省令)の改正も視野に入れる。対策の実施時期は決まっていない。

塗料メーカーの神東塗料(兵庫県尼崎市、高沢聡社長)が製造したダクタイル鋳鉄管の防腐用塗料が、日本水道協会(日水協、会長・小池百合子東京都知事)の規格認証を不正に取得したことが1月に判明。規定とは異なる条件で試験を行ったり、指定外の原料を使用したりしたという。同社の調べによると、水道管用以外にも、建築用や道路用の塗料など計552製品の認証で不適切な行為があった。

厚労省が同日に開いた「水道の諸課題に係る有識者検討会」(座長・滝沢智東京大学大学院工学系研究科教授、水環境工学研究センター長)の会合では、省令(技術基準)で定める資機材の材質に関する規制項目(45件)の充実や、日水協が使用を認める材料のリスト(ポジティブリスト)を整備し、安全性を担保する案が出た。ただ有識者として参画する吉田永日水協理事長は「実際問題として自主規格の一つである日水協がポジティブリストを決めて、製造会社を規制するのは難しい。法令に基づく根拠がないと厳しいだろう」と指摘した。

ある有識者は根本的に「衛生性の確保」という技術基準の設置目的や理念を浸透させる必要性を訴えた。安全確保に関する制度自体が「性善説」を前提に構築されたことへの問題提起もあった。抑止力として不適切な行為が発覚した場合、罰則などの対応を考える必要があるとした。

厚労省医薬・生活衛生局の名倉良雄水道課長は「かなり複雑な課題なので、きょう出された意見を精査・分析し、過去からの経緯や関係者の意見などさまざまなことを踏まえて考えていきたい」と語った。

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