2022/06/23 市況変動/中建審で議論、民間工事の価格転嫁難しく・受発注者でリスク分担を

【建設工業新聞  6月 23日 1面記事掲載】

建設資材の価格高騰を契機に、受発注者間の適切な価格転嫁に向けた議論が熱を帯びてきた。21日の中央建設業審議会(中建審)総会で、受注者側の元請団体が請負金額の変更が認められないケースが多い民間工事契約の改善を求めると、発注者側の不動産業関係者からはビル賃料などが伸び悩む中で価格転嫁の難しさを指摘する声が挙がった。価格高騰リスクを受発注者間で分担する在り方が必要とされており、国土交通省は中建審での継続的な議論を呼び掛けた。

資材高騰を受け国交省は、受発注者間と元下間でスライド条項の設定・運用を関係機関に要請している。それに加えて「例えば請負契約の中でリスク分担の考え方を決め、合意しておくことなどが必要ではないか」と問題提起したのは長橋和久不動産・建設経済局長。予期せぬ事態が起きても適正な契約が保たれる仕組みづくりに本腰を入れる姿勢を見せた。

具体的な対応には中建審が作成する標準請負契約約款の活用などが視野に入る。ただ中建審委員の宮本洋一日本建設業連合会(日建連)会長は、民間工事の標準約款が実際に活用されず「物価スライド条項が無いなど受注者に不利な条件での契約が残念ながら数多く存在している」と現状を説明。記載内容に差異がある公共と民間の各標準約款の書きぶりを近づけるなど、民間工事の契約適正化に踏み込むよう要請した。

その発言に反応したのが谷澤淳一委員(三菱地所代表執行役執行役副社長)。民間発注者の立場からマンション販売価格やビル賃料への工事費高騰分の転嫁がままならない実情を吐露。その上で「建設業界でも生産性向上や重層下請構造の解消などを合わせて進めないと解決策につながらない」と訴えた。技能者に適切な賃金を行き渡らせるためにも重層下請構造は避けて通れない課題となる。中建審でも今後、重層化による非効率性などが議論の俎上(そじょう)に載りそうだ。

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