2022/09/12 国交省/持続可能な建設業検討会で民間発注者から聴取、大手デベが物価変動対応で見解

【建設工業新聞  9月 12日 1面記事掲載】

国土交通省の有識者会議「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」で民間工事の発注者数社へのヒアリングが行われ、資材価格高騰への対応で受注者との考え方の隔たりが浮き彫りとなった。参加した大手デベロッパーは、工事契約後にスライド条項などに基づき請負金額を変更することは現状主流の総価契約の性質上「整合しない」と否定的な見解を示した。従来型の商慣習により円滑な価格転嫁が阻まれている実態があぶり出された格好だ。=2面に関連記事

検討会の第3回会合として不動産会社などへのヒアリングを8日に非公開で行った=写真。不動産協会(不動協、菰田正信理事長)の会員企業2社などから意見を聴取。会合終了後、国交省が委員らとの応答内容を明らかにした。

物価変動を巡っては検討会で想定外のリスクを受発注者で分担する在り方が議論されている。不動協の会員各社によると、受注者の元請とは各自の専門領域に応じ事業上のリスクを受け入れている。物価高騰に当たっては元請を「不動産事業のパートナー」と捉え、長期的にウィン・ウィンの関係になるよう対応していると強調した。

一方、民間工事の請負契約は総価一式が前提であり「価格変動リスクは請負契約にオンされている(折り込まれている)」と説明。スライド条項は詳細な積算から工事価格を設定している公共工事だから対応が可能との見解を示し、民間工事で一般的な総価契約ではスライド条項の導入がなじまないとした。

ヒアリング後、委員からは中央建設業審議会(中建審)が作成・勧告している民間工事の標準契約約款が実質的に機能していないことを疑問視する声があった。標準約款には経済事情の激変などを理由に「請負代金額の変更を求めることができる」との規定がある。ただ受注者側のヒアリングでは、発注者に契約変更の協議を申し入れても応じてもらえないケースが多いとの指摘があった。

建設業法の規定では価格変動や請負金額の変更に関する事項を契約時に書面交付しなければならず、この法令と契約変更条項の関係性を問う委員もいた。業法や標準約款の実効性の確保で今後も議論が交わされる見通しだ。

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