2022/09/27 厚労省/建設業の墜落・転落防止策で方向性、手すり先行工法の義務化見送り

【建設工業新聞  9月 27日 2面記事掲載】

建設業の労働災害の要因として最も多い「墜落・転落災害」の防止策で一定の方向性がまとまった。厚生労働省が労働安全衛生規則を改正し、安全性の高い本足場の使用を原則化。建設業界団体から反対意見が出ていた「手すり先行工法」の義務化は見送る。専門的な知識が必要な足場組み立て後の点検を巡っては、実施者に求める要件を検討するため、3年程度かけて調査を行う方針だ。

26日に建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合(座長・蟹澤宏剛芝浦工業大学建築学部建築学科教授)を東京都内で開き、防止策に関する報告書を大筋で了承した。

報告書によると、本足場の使用を原則とするが、設置スペースが確保できないなど一定の条件下では一側足場の使用も例外的に認める。屋根・屋上の端などからの墜落事故を防ぐため、法令順守徹底を目指す。安全設備の設置に関するマニュアルを見直し、完全義務化された「フルハーネス型墜落制止用器具(安全帯)」の着用について明記。木造家屋建築工事での防止対策も盛り込むとした。

手すり先行工法は、有効性を認めるとともに「一層の活用が望まれる」と記述。関連指針を充実する。足場の点検体制も強化。組み立て後の点検では、実施者の能力と労災や法令違反発生の因果関係が不明確とされる。今後、厚労省がそれらの関係性を調査した上で、実施者の要件を検討する。

将来の課題としてデジタル技術の活用や高所からの墜落・転落防止に軸足を置いた安全衛生教育の確立を挙げた。

会合に出席した実務者からはさまざまな意見が出た。これに対し、蟹澤座長は「これから具体的に検討することの頭出しができた」と評価。会合の最後、厚労省の美濃芳郎労働基準局安全衛生部長は「法令改正の取り組みにより建設業の労災が一層減少し、業界の発展につながることを期待している」とあいさつした。

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