2022/11/08 適正工期の理解浸透を、3割で「発注者が協議応じず」/国交省が元請調査

【建設工業新聞  11月 8日 1面記事掲載】

国土交通省は主要な元請企業を対象に、5~8月に行ったモニタリング調査の結果を明らかにした。工期設定の協議状況に着目すると、約3割で発注者が協議に応じてくれないとの回答があった。中央建設業審議会(中建審)が作成・勧告した「工期に関する基準」を元請の約3割が十分に認知していない実態も判明。時間外労働の罰則付き上限規制の適用が迫る中、受発注者双方で適正工期の確保に向けた理解を広げる必要がありそうだ。

モニタリング調査は2021年10月から継続的に実施。完成工事高上位の元請を中心にヒアリング対象を選定し、公共・民間を問わず21年度に受注した工事の取引状況を支店・営業所や現場所長に聴取した。受発注者間の取引では物価高騰を踏まえた価格転嫁の進展状況などを確認。約7割の工事で発注者への契約変更の申し出があり、その8~9割で協議が進行中だった。

建設現場の長時間労働の是正につながる適正な工期設定には、発注者の理解が不可欠となる。ただ今回の調査では「工期に関する基準」を「知らない」「内容が分からない」との回答が約3割に達し、そもそも元請の現場担当者が十分に認知・理解していなかった。

建設業法に規定する「著しく短い工期の禁止」の勧告対象には発注者も含まれる。受注者との協議を含む適切な対応の必要性を発注者に訴える意味でも、現場レベルでの理解の浸透が急務だ。今夏からはモニタリング調査の対象範囲を発注者にも広げており、国交省は受発注者双方に適切な価格転嫁や適正な工期確保を働き掛けていく方針だ。

元下間の取引では法定福利費の内訳明示が不十分な実態が浮き彫りとなった。法定福利費が明示されていても約5割は算出根拠が不明で、契約金額に占める割合が著しく低い事例が約2割あった。設定された法定福利費から想定して技能者単位の社会保険の加入確認が厳格に行われていない恐れがあったり、大幅な値引きで実質的に法定福利費や労務費を賄えない請負金額となる恐れがあったりするケースも一部あった。

国交省は調査対象企業に、現場レベルでの改善や配慮を要請する事項をまとめた文書を10月下旬に送付。見積もり依頼・提出を踏まえた元下双方の協議による適正な手順を経た契約の徹底や適正な施工体制の確立を促す。

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