2023/01/05 国交省有識者会議/過度な低価格受注の抑止策など議論、業法規制の要件緩和を

【建設工業新聞  1月 5日 2面記事掲載】

国土交通省は2022年12月27日に開いた有識者会議「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」の第6回会合で行われた意見交換の内容を明らかにした。技能者の賃金を圧迫する過度な低価格受注の抑止策や、多能工の普及方策を主要テーマに議論が交わされた。低価格受注を巡っては、建設業法で規定する「不当に低い請負代金の禁止」の適用要件を緩和し、実効性の高い仕組みに見直す必要性に多くの賛同意見が上がった。

不当に低い請負代金の禁止は、取引上の優越的な地位の不当利用が適用要件の一つになる。このため受注者や下請が自らの意志で価格を引き下げた場合、業法違反とは判断されず、低価格受注が見過ごされてしまう。賃金引き下げを引き起こしかねないダンピング競争に歯止めを掛けることが本質的な目的なのであれば、必ずしも必須の条件とはいえない「地位の不当利用」を要件から削除してはどうかと提案する委員がいた。

適正な賃金水準を担保する観点で「通常必要と認められる原価」の明確な基準を設定する必要があり、その際は「工期に関する基準」のように中央建設業審議会(中建審)で策定・勧告するのが「合理的」と指摘する委員もいた。

さらに一歩進んで、適正な賃金の行き渡りを「見える化」し確認する方策の必要性まで議論は展開。委員らは▽建設業許可の要件に労働者保護の観点を加える▽一定水準以上の賃金支払いを公共工事や元下間の契約条項に設ける(発注者に対する「表明保証」など)▽建設キャリアアップシステム(CCUS)で実態を把握する-などのアイデアを列挙。公共工事設計労務単価と実質的な賃金の差額分が別のところに流れていると仮定し「その流れを断ち切り、行き渡らせる(行政の)コミットが必要」との訴えもあった。

多能工は評価指標の乏しさが普及を妨げている面があり、その活用メリットに見合ったインセンティブを付与していく必要があると指摘する委員が多かった。

仕事量の繁閑に左右されず対応できる「稼働率」を評価したり、複数工種の習得による高いマネジメント能力を評価したりして賃金に反映させる提案があった。CCUSを活用した個々の技能者の生産性の「見える化」に期待する声も聞かれた。多能工の育成に取り組む企業を費用面も含めて後押しする枠組みの必要性を指摘する声もあった。

国交省によると、検討会で扱う予定のテーマは今回でほぼ提示し終えた。検討成果を取りまとめる年度末までに今後2、3回の会合を予定し、さらに議論を深めていく。

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