2023/01/06 総合工事業の価格転嫁・他業種より停滞、発注者に注意喚起文書送付/公取委調査

【建設工業新聞  1月 6日 1面記事掲載】

公正取引委員会の調査で、労務費や原材料費の上昇に伴う買い手への価格転嫁が「総合工事業」で他業種よりも滞っている可能性があることが分かった。取引価格の引き上げを下請業者やメーカーなどから要請されても、デベロッパーなどの不動産取引業者や地方自治体といった発注者に要請できていない実態がある。調査の結果、コスト上昇分の協議に対応しない行為などがあった発注者には個別に注意喚起文書が送られたが、不動産取引業はその送付割合が最も高い業種の一つだった。

公取委が独占禁止法に規定する「優越的地位の乱用」に関する緊急調査の結果を公表した。総合工事業を含む22業種を対象に受注者と発注者の立場で回答する調査票をそれぞれ送付。受注者向け調査は総合工事業1805社、各業種の発注者に当たる業種も含まれる発注者向け調査には総合工事業688社、不動産取引業391社、設備工事業568社などが回答した。

総合工事業者の回答を見ると取引価格の引き上げを受注者の立場で「要請した」は53・5%、発注者の立場で「要請された」は87・1%。22業種の中で「要請した」と「要請された」の開きが最も大きかった。公取委の担当者は「サプライチェーン(供給網)における価格転嫁の連鎖が円滑に機能していない可能性がある」と指摘している。

公取委は調査結果に基づき、優越的地位の乱用の要件に該当する恐れがある行為が認められた発注者4030社に注意喚起文書を送付。価格交渉の場でコスト転嫁の必要性を明示的に協議せず、従来通りに取引価格を据え置く行為などが不適切に当たると直接指摘した。書面調査と連動し行われた個別事業者への立ち入り調査でも、こうした不適切行為が総合工事業や不動産取引業を発注者とする取引で確認されたという。

注意喚起文書の送付先は不動産取引業120件(発注者向け調査の業種別回答者数に占める割合30・7%)、総合工事業149件(21・7%)、設備工事業103件(18・1%)など。不動産取引業への送付割合は道路貨物運送業などと並んで最も高かった。

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