2023/03/02 国交省持続可能検討会/生産性・品質競う環境へ報告書骨子案、労務費圧縮に歯止め

【建設工業新聞  3月 2日 1面記事掲載】

国土交通省の有識者会議「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」がまとめる報告書の骨子案が明らかになった=表参照。民間工事の請負契約の適正化に向け、適切な協議プロセスを確保する必要性を強調。技能労働者の処遇改善の観点で優良な企業が価格競争で淘汰(とうた)されないよう、労務費の圧縮を原資とした不当廉売を制限すべきとの姿勢を強く押し出す。行き過ぎた価格競争に歯止めをかけ、生産性や品質で競うことができる環境整備への道筋を示していくことになりそうだ。

1日に開いた検討会の第8回会合で国交省が説明した。基本的な考え方として骨子案を示し、その実現に向けた施策案をより具体化した。前回会合で提示した論点整理を踏襲しつつ、短期的な対応が求められる施策案に焦点を絞った。

請負契約の適正化に向けた施策案の一例として、受発注者間の情報の非対称性を解消する対応を双方に求める。建設業法に規定する注文者から受注者への情報提供義務と同じように、受注者からも請負契約の前提となる計画や設計の熟度、建設資材の調達先や価格動向など工事に影響を及ぼす事象の情報を注文者に提供するよう制度化。請負代金の内訳として通常予想されるリスクに対応する予備的経費や、それ以外のリスクに対応する「リスクプレミアム」の明示を制度化することも視野に入れる。

重層下請構造に起因した問題が生じないよう、施工体制の「見える化」による責任の所在や役割の明確化を促す。国がICTを活用した現場管理の指針を作成し、順守を求めることを想定。有効なツールとして建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用を位置付ける。

不当廉売の制限対象は、受注者が自らの意志で価格を引き下げるダンピング行為を念頭に置く。中央建設業審議会が公共工事設計労務単価を基に「標準労務費(単価)」を勧告し、それを見込んだ「通常必要と認められる原価」を下回る請負契約を制限する。適正な賃金を行き渡らせるため、下請などが設計労務単価相当額の支払いを誓約する仕組みを取り入れる。

同じような考え方で工期ダンピングの制限も検討。建設業法では注文者による「著しく短い工期の禁止」を規定しているが、受注者が「工期に関する基準」や時間外労働規制に抵触した場合も制限できるようにする。

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