2023/04/03 働き方改革-ゼネコン/時間外上限規制まで1年、厳しい現状も徐々に手応え

【建設工業新聞  4月 3日 1面記事掲載】

建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用される2024年4月まで1年に迫る中、ゼネコン各社が働き方改革の実現へ対応を急いでいる。日刊建設工業新聞社が行ったアンケートの結果によると、土木と建築の現場で上限規制の対応に「めどが立っている」とした企業は2社だった。現時点では厳しい状況があるものの、生産性向上やDX推進などで手応えを感じている企業も目立つ。新3K(給与・休暇・希望)への転換が必須の中で、正念場の1年が始まる。=5面に関連記事

働き方改革関連法では時間外労働(休日含まず)の上限が月45時間、年360時間に設定されており、来年4月以降は特別な事情がなく超過した場合、罰則が科せられる。こうした原則規定への対応について、2~3月に主要ゼネコン35社にアンケートを実施し全社から回答を得た。=3面に回答企業一覧

上限規制を見据えた達成度合いを、現場部門(土木、建築)と内勤部門のそれぞれで、▽達成済み▽達成のめどが立っている▽達成のめどは立っていないが順調に削減が進んでいる▽労働時間削減の必要性を感じているがなかなか難しい▽達成は困難-の5段階から選んでもらった。

現場で「達成済み」との回答は土木、建築ともなく、「めどが立っている」は建築で1社(3%)、土木で1社(3%)だけだった。「達成のめどは立っていないが順調に削減が進んでいる」との回答は土木で14社(44%)、建築で7社(21%)だった。

内勤部門では「達成済み」が2社(6%)、「めどが立っている」とした企業が15社(44%)に上った。コロナ禍で急激に普及したテレワークなどで働き方にも変化が見られ、外勤部門に比べ前進している実態が分かった。

働き方改革の取り組みでは、DX化や現場支援体制の強化、在宅勤務など労働環境の改善、業務のアウトソーシングなどの回答が多かった。労働時間の適正管理などを含めた地道な対策を複合的に積み重ねていく方向だ。「最後は一人一人の意識の問題」(中堅ゼネコン)と意識改革の重要性を指摘する企業も目立つ。

働き方改革を後押しする入札契約制度が浸透しつつある官庁工事と同様に、民間工事でも「4週8休」を見据えた工期や価格の設定がより重要になるとの声も上がる。自助努力に加え、発注者からの理解・協力というパートナーシップの深化が求められる。

法令順守は当然のことだが、今回の規制強化が新3Kのより良い建設業界へと変革を果たす大事なステップと見る向きも強い。ゼネコン関係者は「ITなどを駆使しながら、労働集約型から脱却したい」と力を込める。

時間外労働の罰則付き上限規制への対応に関するアンケート回答企業(35社、五十音順)は次の通り。
△青木あすなろ建設△淺沼組△安藤ハザマ△大林組△大本組△奥村組△鹿島△熊谷組△鴻池組△五洋建設△佐藤工業△清水建設△大成建設△大日本土木△大豊建設△高松建設△竹中工務店△竹中土木△鉄建建設△東亜建設工業△東急建設△東鉄工業△東洋建設△戸田建設△飛島建設△ナカノフドー建設△西松建設△日本国土開発△長谷工コーポレーション△ピーエス三菱△フジタ△前田建設△松井建設△三井住友建設△若築建設。

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