2023/04/18 働き方改革―適正工期の確保/国交省が労働局同行で元請訪問支援、違反事例に危機感

【建設工業新聞  4月 18日 1面記事掲載】

国土交通省は民間発注工事も含めた工期の適正化に本腰を入れる。時間外労働の罰則付き上限規制の適用まで1年を切る中、建設業法に規定する「著しく短い工期の禁止」に違反する恐れがある行為に対し、行政指導を行う初のケースが明らかになった。こうした事例も念頭に、労働基準監督機関を抱える厚生労働省と連携した動きを強化。都道府県労働局が同行する形で、個別の元請企業を訪問支援する新たな取り組みに着手する。=2面に関連記事

著しく短い工期の禁止は2020年10月施行の改正業法で規定。中央建設業審議会(中建審)作成の「工期に関する基準」を踏まえ、違反行為があった発注者や元請に国交相らが勧告できる。ただし、これまでは同法に基づく行政指導の実績がなかった。国交省の通報窓口に相談を寄せたとしても、契約相手との関係悪化を恐れ、行政指導を望まなかったり詳細な確認に応じなかったりするからだ。

初の行政指導となったのは、勧告には至らないが「注意喚起」を行ったケースだ=表参照。建設専門紙各社の取材に応じた国交省不動産・建設経済局建設業課建設業適正取引推進指導室の山王一郎室長によると、元請が下請に工期のしわ寄せを行っていることが認められた。

資材価格高騰の影響で発注者との契約金額交渉が長引き、当初工期を圧迫。さらに雨天や機械故障で工事進捗(しんちょく)が遅れ、工期延長を現場側が求めたが、会社の判断として発注者に持ちかけなかった。その結果、工期の終盤に「4週0休」となる典型的な突貫工事となったという。

こうした事例は氷山の一角に過ぎない。時間外規制適用を目前に控え、元請や発注者に法制度を周知し自主的な改善を促していく必要性を山王室長は強調する。元請各社の支店や現場所長を直接訪問してヒアリングする「モニタリング調査」の一環で、本年度は適正工期の確保に特化した調査を新たに計画。労働局担当者が同行し、下請へのしわ寄せ状況などに目配せする。

都道府県別に労働局が主催する「建設業関係労働時間削減推進協議会」は、民間発注者を含めた組織体として役割を強化。構成員として従来の地方整備局や建設業団体だけでなく地元の経済団体などを新たに加え、地域の建設関係者全体で意思疎通する機会とする。

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