2023/05/24 中建審・社整審基本問題小委/将来世代のために議論を、建設業関係者が担い手不足訴え

【建設工業新聞  5月 24日 1面記事掲載】

建設工事の受発注者間・元下間の請負契約に焦点を当てて法制度の整備・改正を検討する有識者会議が始動し、委員らの顔合わせとなった22日の会合=写真=でそれぞれの立場から意見が飛び交った。建設業関係者からは担い手不足がより深刻化している現状報告があり、技能者の賃金相場の底上げが不可欠との訴えが相次いだ。委員長を務める小澤一雅東京大学大学院工学系研究科特任教授は「将来世代のための意見を」と呼び掛けており、官民の発注者も含めた関係者全員で目線を合わせた議論が求められる。=2面に関連記事

中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会が合同設置する基本問題小委員会の同日の初会合には委員20人が全員参加。国土交通省が議論のテーマとして提示した▽請負契約の透明化による適切なリスク分担▽賃金引き上げ▽働き方改革など-の三つで各自の意見を順に表明した。

地域建設業を代表し参加した荒木雷太岡山県建設業協会会長は「黒字廃業が続発している。それくらい人が来なくなっている」と地方の中小零細企業の窮状を明かし、今回の議論を通じ「賃金引き上げのスキームをつくることが一番だ」と主張。岩田正吾建設産業専門団体連合会会長も、諸外国や他産業より賃金が低く安定しない現状では「若い人にも外国人にも日本の建設業は選ばれない」と指摘し「働き手の目線で変えることが必要」と訴えた。

労務費を原資とする低価格競争を防止し、適切な労務費が支払われるための方策の具体化が今後の論点となる。学識者からは「賃金引き上げより、状況が悪くなっても下がらない仕組みが必要」(西野佐弥香京都大学大学院工学研究科准教授)、「適切な労務費を誰が何に基づき決めるのか、日本に合ったやり方を議論できれば」(堀田昌英東京大学大学院工学系研究科教授)、「安値受注を極限まで減らすには建設業法と建設キャリアアップシステム(CCUS)を徹底的に使うしかない」(蟹澤宏剛芝浦工業大学建築学部教授)などの声が上がった。

初回の締めくくりに国交省の長橋和久不動産・建設経済局長は、政府が推進する「成長と分配の好循環」を念頭に「これまでは成長に向け予算確保や不動産関係の税制改正でマーケットを動かしてきたが、分配の面が足りなかった。産業全体で解決するため次回以降、材料を出し議論していきたい」と述べた。

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