2023/06/20 日建連・意見交換会を振り返る・上/上限規制を変革のチャンスに

【建設工業新聞  6月 20日 1面記事掲載】

◇「2024年問題」危機感共有

日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)と国土交通省地方整備局など公共発注機関による2023年度「公共工事の諸課題に関する意見交換会」が全日程を終えた。建設業への適用開始まで残り1年を切った時間外労働の罰則付き上限規制に対応するための働き方改革や生産性向上を議論。将来にわたる担い手の確保・定着を意識し、若者が入職したくなるような魅力あふれる新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)産業へ変革していくための取り組みについて、率直に話し合われた。

意見交換会は5月15日の関東から今月15日の北海道まで全9地区で開かれた。5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが第5類に移行し、4年ぶりにマスクを外した通常の対面形式で開催。会合後の懇親会も通常の立食形式で行われ、会議とは違った和やかな雰囲気の中で関係者らが交流を深めた。

各地区の会議では、いわゆる「2024年問題」として来年4月に迫る時間外労働の罰則付き上限規制適用への対応に関する議論に最も多くの時間を割いた。日建連は上限規制を標準とする適正工期の設定や土日の完全週休2日を要望。池田謙太郎インフラ再生委員長は「世の中で休日と考えられているのは土日に祝日、有給休暇も加えた年間130日強。われわれが現在目指しているのは4週8閉所で104日程度という最低限のレベルだ」と現状を説明し、「2024年問題に対応できないだけでなく、建設業に人が来なくなってしまう」と危機感をあらわにした。

日建連が意見交換会前に会員企業を対象に調査したところ、国交省直轄の道路・河川工事の約6割で土日閉所を基本とする完全週休2日を実現。ただ、当初発注段階で4週8閉所に必要な工期が「短すぎた」現場も約4割に上る。意見交換会ではその理由について積算基準上の標準工期が妥当でないと指摘する会員企業が多かったことを説明。茅野正恭公共工事委員長は該当工種にトンネルの覆工やインバート工、掘削工を列挙し、歩掛かりや日当たり施工量の再検証を求めた。

一方、国交省も「休日の質向上」を掲げ、直轄土木工事で工期全体平均で週休2日を確保する従来の考え方を、月単位での週休2日に転換。整備局などによって進捗(しんちょく)にばらつきはあるものの、土日の休日確保や法定休日もカウントされる時間外労働上限規制への対応は着実に前進している。都道府県単位で全公共工事現場の統一土曜閉所を推進する動きも広がっており、中部、北海道両地区では本年度から実施日を毎週に増やす方針が示された。

全会合で共通して「整備局の取り組みを評価してもらっている部分もあれば、厳しい指摘もあった」(廣瀬昌由関東地方整備局長)ことについて、発注者側は真摯(しんし)に受け止め、改善につなげると口をそろえる。

廣瀬氏は議論を振り返り「2024年問題、担い手確保は行政も一緒になって取り組むべきだと改めて強く認識した」と述べ、日建連関東支部(安部吉生支部長)ともフォローアップに努めていく方針を示した。藤巻浩之九州地方整備局長も「現場の事務所長らに早く問題点や改善要望を伝えてもらえば、病気の早期発見、早期治療といったように対応できる」と呼び掛けた。

将来にわたる担い手の確保・定着を左右する2024年問題。意見交換会は受発注者が改めて危機感を共有する機会となった。日建連の田中茂義公共契約委員長は「時間外上限規制を逆にチャンスと捉え、さまざまな働き方改革を実現していかないと後がない」と前向きにとらえる。

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