2023/06/30 業界団体23年度総会終了/上限規制対応の働き方改革急務、担い手確保へ魅力向上意識

【建設工業新聞  6月 30日 1面記事掲載】

建設業団体の2023年度定時総会が今月でほぼ終了する。来年4月に迫る時間外労働の罰則付き上限規制適用まで残り1年弱。危機感を強める各団体は会員企業一丸となり、働き方改革や生産性向上のさらなる加速、強化に努める方針を表明。発注者の理解や協力も不可欠として適切な工期や予定価格の設定も訴えた。団体トップの発言や本年度事業計画を振り返り、今後の課題や展望を探る。

新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが第5類に移行し、多くの団体が4年ぶりにマスクを外した通常の対面形式で開催。総会後は立食の懇親パーティーも行われた。

任期満了に伴う役員改選で会長交代があった主要団体は海外建設協会(海建協、佐々木正人会長)や日本橋梁建設協会(橋建協、川畑篤敬会長)など。

日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長は将来にわたる担い手確保に向け、「新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)の魅力あふれる業界づくりに関係者一丸で取り組む」と決意を新たにした。時間外労働上限規制の対応では、23年度に上限規制の特例規定(月80~100時間・年720時間以内)と同じ条件を1年前倒ししクリアする独自目標の達成を掲げる。建築工事の生産性向上にも注力。23年度事業計画の新規施策として建築現場で利用するさまざまな資機材の識別コードを標準化し、デジタルで一元管理できるようにする。

「上限規制に対応するため一層の働き方改革が必要」と話すのは全国建設業協会(全建)の奥村太加典会長。引き続き都道府県建設業協会や会員企業とともに「目指せ週休2日+360時間(ツープラスサンロクマル)運動」のさまざまな取り組みを推進する。新たな試みでは、厚生労働省都道府県労働局が主催する「建設業関係労働時間削減推進会議」の開催を呼び掛ける。都道府県単位で受発注者による時間外労働削減方策の協議を促す。

全国中小建設業協会(全中建)の土志田領司会長は、時間外労働上限規制の適用を見据え「技能労働者の賃金アップと4週8閉所の実現は工事費の上昇に大きな影響を与える」と指摘。市町村発注工事の割合が大きい会員企業が多いことも踏まえ「公共発注者は理解と覚悟を持ってほしい」と投げ掛けた。行政機関には積算基準や歩掛かりの見直し、入札契約制度改革による安値受注の防止などを求めていく。

「魅力ある道路建設業に転換する」と力を込めたのは日本道路建設業協会(道建協)の西田義則会長。会員企業向けに「時間外労働削減で効果のあった会員の事例を共有するなど継続的に支援する」と伝えた。

日本埋立浚渫協会(埋浚協)の清水琢三会長は、土日閉所の完全週休2日にこだわらず月単位の4週8休確保に努める方針を表明した。工程の変化を余儀なくされる港湾工事特有の自然条件に対応する一方、週休2日を確保できても時間外労働が思うように減っていない状況も問題提起。背景には設計変更などで元請の技術者に求められる作成工事書類の多さや複雑さがあるとして、発注者に速やかな改善を訴えた。

業界にとって高止まりが続く資材の価格転嫁も喫緊の課題として、22年度に続き多くの団体総会で話題に上がった。日建連の宮本会長は民間工事を念頭に、発注者からの要望を一方的に受け入れやすい「請け負け」の契約関係改善を強調。請負契約の透明化や適切なリスク分担などをテーマに国の審議会が議論している制度設計の行方を注視する。

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