2023/08/24 中建審・社整審基本問題小委が中間まとめ案/
技能者の処遇改善、建設事業者に努力義務

【建設工業新聞  8月 24日 1面記事掲載】

国土交通省の中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会が設置する基本問題小委員会の第4回会合が23日に東京都内で開かれ、建設業関連制度の法令や運用の改善を提言する「中間とりまとめ」案が示された。持続可能な建設産業の構築に向けた抜本的な課題を技能者の処遇改善に据えた。適切な賃金とその支払いを確実にするため、新たに建設事業者に対し法令で技能者の適切な処遇確保を求める努力義務規定を提案した。=2面に関連記事

中間取りまとめ案は、5~7月に開いた過去3回の会合で議論してきた▽請負契約の透明化による適切なリスク分担▽賃上げ▽働き方改革-の3テーマ別に整理。委員から出た意見を踏まえ、建設業法など関連する法令や約款などの見直しによって対応すべき事項と、法令などの実務的なルールとなる運用の策定や解釈によって対応すべき事項に分けてまとめた。

技能者の処遇改善に向け最重要課題となる賃上げの提案では、技能者に適切な賃金や法定福利費の確実な支払いを担保する制度設計を挙げた。法令で建設事業者に対し技能者の適切な処遇確保に努めることを求めるとともに、公共・民間建設工事の標準請負契約約款や標準下請契約約款には適切な賃金支払いへのコミットメント(表明保証)や賃金開示への合意に関する条項の追加を検討すべきとした。

努力義務化による技能者の適切な処遇確保で前提とする賃金水準は、国交省が受注者による労務費を原資とした廉売行為を制限するために検討している「標準労務費」を参照するように求めた。工種ごとに公共工事設計労務単価に歩掛かりを乗じ単位施工量当たりの金額として算出することを提案。改正建設業法に基づく「工期に関する基準」と同様、中建審が作成し労務比率の高い工種から段階的に勧告する対応も考えるべきとした。標準労務費の内容や範囲は中建審にワーキンググループ(WG)を設け、技能者の能力や経験に十分考慮しながら議論することを求めた。

官民すべての工事を対象に、下請も含め受注者による賃金の支払い・行き渡り状況をICTで確認する仕組み作りを提起。当面は公共工事で受注者が発注者に賃金開示し、行政とも共有しながら実態把握するよう訴えた。

国交省は9月に開く次回会合を経て中間取りまとめを決定し、秋の中建審会合に報告する予定だ。

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