2023/09/11 国交省基本問題小委/業法・入契法改正へ中間まとめ決定、処遇改善や契約透明化

【建設工業新聞  9月 11日 1面記事掲載】

国土交通省の中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会が合同設置する基本問題小委員会の第5回会合が東京都内で開かれ、法令や運用の改善を提言する「中間取りまとめ」が固まった。テーマは持続可能な建設業の構築。国交省は将来にわたる担い手確保や直面する資材高騰などの課題に対応するため、中間取りまとめを踏まえ建設業法や公共工事入札契約適正化法(入契法)の改正を検討する。2024年通常国会への法案提出を目指す。=2面に中間取りまとめ要旨

中間取りまとめは業界外の有識者で組織する「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」が3月にまとめた提言を受け、基本問題小委員会が5月から月1回のペースで議論してきた。8月の前回会合に提示した中間取りまとめ案をほぼ踏襲。抜本的な処遇改善の推進や急激な資材高騰への対応、時間外労働上限規制に対応した残業・休日出勤の削減など、従来の商慣習では困難な課題に対応する狙いがある。

柱は▽請負契約の透明化による適切なリスク分担▽適切な労務費などの確保や賃金行き渡りの担保▽魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上-の三つ。それぞれ建設業法など関連する法令や約款などの見直しにより対応すべき事項と、法令などの実務的なルールとなる運用の策定や解釈で対応すべき事項に分け整理した。

請負契約の透明化による適切なリスク分担では、発注者からの要望を一方的に受け入れやすい民間工事を念頭に提言。契約上、受発注者間で生じている情報の非対称性(格差)解消や物価変動に対する対応の明確化、適切なコミュニケーションが確保されるような制度や運用を求めた。

適切な労務費などの確保や賃金行き渡りの担保では、建設事業者に対し法令で技能者の適切な処遇確保を求める努力義務規定を提案し、下請も含め適切な賃金や法定福利費の確実な支払いを担保する制度設計を挙げた。その際、賃金水準は受注者による廉売行為を制限するための基準として「標準労務費」の考え方を提示。中建審が工種別に段階的に勧告することを検討課題にすべきとした。

魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上では、発注者だけでなく受注者にも著しく短い工期、いわゆる「工期ダンピング」の禁止規定を求めた。

国交省は中間取りまとめを秋に予定する中建審に報告した後、本格的に建設業法や入契法の見直しに着手する。現在、自民党が検討している議員立法の公共工事品質確保促進法とともに「担い手3法」として14年、19年に続く一体改正も視野に入れている。

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