2023/09/22 厚労省/一人親方の労災報告制度で大枠/特定注文者らに義務化、業界は負担増懸念

【建設工業新聞  9月 22日 1面記事掲載】

厚生労働省は21日に東京都内で有識者会議を開き、建設業の一人親方など個人事業者の安全衛生対策の一環で、労働災害の実態把握を目的に新設する報告制度の大枠を示した。休業4日以上の死傷災害について、被災した一人親方自身が直近上位の特定注文者や現場管理事業者への伝達を義務化。特定注文者らには、必要事項を補足した上で労働基準監督署に報告する義務を課す。2段階による報告スキームについて、会議に参加した建設業界の関係者らは、義務化による特定注文者らの負担増や現場の混乱が懸念されるとし、スキームの見直しを訴えている。

今回示された報告制度の枠組みでは、入院や死亡などで本人による報告が不可能なケースでも、特定注文者(存在しない場合は現場の管理事業者)に、災害発生の事実を把握したことの報告義務を課す。特定注文者らが存在しない場合は報告義務の対象外だが、情報提供の形で一人親方や所属する業種・職種別団体が労基署に直接報告できる仕組みとする。

このほか、一人親方から特定注文者らへの報告を促すための不利益取り扱いの禁止や、現場で違法行為などがあった場合の申告権の付与についても規定する。

これまで議論を重ねてきた有識者会議では、効果的な対策立案の基礎情報として、労災実態を把握するという制度の目的や趣旨については全会一致で了承している。ただ、報告主体を巡っては意見が一致していない。

同日開かれた個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会で、全国建設業協会(全建)の出口和則労働委員会委員は報告主体の一部変更を要望。日本建設業連合会(日建連)の本多敦郎安全委員会安全対策部会長は、効率性や実効性の観点から、報告義務対象の労災でも一人親方が労基署に直接報告できる制度の併用を提案した。

報告制度の目的は一人親方の被災状況を労基署が把握することにあり、両者の間に特定注文者らを挟むのは情報を正確かつ広く収集するためだ。一人親方が労基署に直接報告したとしても情報把握という制度目的を実質的に達成できるため、通達によって特定注文者らが労基署への報告義務を果たしたと見なす方策を提言した。

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