2023/10/02 働き方改革-半年後に迫る中で・1/大きな前進なく募る危機感

【建設工業新聞  10月 2日 1面記事掲載】

◇地道な一歩積み重ねる

建設業に時間外労働(残業)の罰則付き上限規制が適用される2024年4月まで半年を切った。建設関連各社は生産性向上や繁忙部署への支援体制強化などに注力しているものの、残業時間を所定内で収めるには、まだまだハードルが高い。だが法律で定められた以上、安全や品質と同様に順守が必須となる。働き方改革実現に向けて建設業界は変われるのか--。正念場を迎える官民の動向を追った。

日刊建設工業新聞社は、時間外労働の上限規制への対応状況を把握するため、8~9月にゼネコンを対象とするアンケートを実施。2~3月に行った前回調査と同様、35社から回答を得た=3面にアンケート回答企業一覧。

現場(土木)、現場(建築)、内勤の3分野を対象に、▽達成済み▽達成のめどが立っている▽達成のめどは立っていないが順調に削減が進んでいる▽労働時間削減の必要性を感じているがなかなか難しい▽達成は困難-の5段階で現状を答えてもらった。

今回調査の結果、現場での「達成済み」はゼロで、「めどが立っている」との回答は土木が2社(6%)、建築が1社(3%)だけだった。「めどは立っていないが順調に削減」との回答は、土木19社(59%)、建築13社(38%)となった。

前回調査と比較すると、5段階の回答で状況が改善した企業は土木が10社(31%)、建築が9社(26%)にとどまった。前回と同じだった回答が、土木で20社(63%)、建築で23社(68%)を占めた。悪化した企業も土木で2社(6%)、建築で2社(6%)あった。多くのゼネコンが、この半年間、残業削減への大きな前進が見られないまま、目の前の多忙な工事に奔走している実態が見て取れる。

働き方改革関連法は建設業に5年間の猶予期間を経て、時間外労働の上限を原則で月45時間、年360時間に制限する。ただし災害時の復旧・復興事業は特別条項の対象となり、年6回までの月45時間超えや、年720時間以内などが認められる。まずは特別条項をクリアしようと複数のゼネコンがトライアル中だが、「年6回の月45時間超えの順守も難しい」「できていないところをどう対処するかで手いっぱいで、先を見た施策に手が回らない」との声が上がる。

「非常に厳しい。何か特効薬があれば教えてほしい」「建築はそもそも無理」--。そうした本音も漏れてくる。各社は社員の残業時間を逐次管理し、超過者がいる事業所に注意喚起やフォローを行う。労働時間を「見える化」していくと、メスを入れざるを得ない。あるゼネコン担当者は「24年度以降、本当に厳しくなれば強制的に休ませざるを得ない」と危機感を募らせる。

「ここまでくると意識改革の部分が大きい」(働き方改革推進担当者)ことも事実。上限規制が半年後に迫る中、魅力ある産業へと転換していくために地道な一歩を積み重ねる時期が続く。

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