2023/11/21 国交省、「標準労務費」検討に着手、歩掛かり標準規格特定へ補正予算案に調査費計上

【建設工業新聞  11月 21日 1面記事掲載】

国土交通省は、建設業での適切な労務費や賃金の行き渡りを担保する基準として制度化を目指す「標準労務費」の具体的な検討に入る。今月閣議決定した2023年度補正予算案に、制度化を見据えて前もって実施する調査・分析の委託費を計上。公共工事設計労務単価に直轄工事で使用する歩掛かりを乗じる方法で標準労務費を作成することを前提に、多くの種類が存在する歩掛かりの中で工種ごとに「標準的な仕様・条件(規格)」を特定するための方策を検討する。

中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会が9月公表した「中間取りまとめ」を踏まえた対応となる。

中間取りまとめでは標準労務費を中建審が勧告することを提言。請負契約時に労務費の相場観を与える役割を持たせ、労務費を原資とする廉売行為を規制するための参考指標としても用いる。勧告前に幅広く関係者の合意を得るためワーキンググループ(WG)を設置する方向となっており、WGで議論を始める際の検討材料として工事データの調査・分析結果を用意しておく狙いがある。

国交省によると、歩掛かりは直轄土木工事だけでも1000種類を超える。工種ごとの規格も多く、例えば型枠工(土木)で10規格、掘削工では61規格が存在する。標準労務費の作成には、まず各工種で標準的な規格を特定する必要がある。

基本問題小委では使用頻度や金額に照らして標準的な規格を特定する方法が提示されており、それを直轄工事の直近の膨大な工事発注データを調査・分析することで実践する。工種によっては標準的な規格を複数設定したり、幅を持たせたりする必要性が生じることも念頭に置きながら、調査・分析結果を踏まえWGで議論を詰めていくことになりそうだ。

補正予算案では「建設業の担い手確保に向けた賃上げの実現」に関連費用3億2000万円を配分。標準労務費の検討に加え、技能者の賃金実態を簡易に確認できる仕組みの検討に充てる。具体的には建設キャリアアップシステム(CCUS)のシステム改修を視野に入れている。

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