2024/02/26 建設業の賃金が全産業と依然大きな開き、労務単価上昇さらに波及を/国交省推計

【建設工業新聞 2月 22日 1面記事掲載】

公共工事設計労務単価が12年連続で上昇する中、建設技能者の賃金は実際にどの程度伸びているのか--。国土交通省が、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を基に2022年の年収額の平均値を算出したところ、非正規を除く全産業が494万円だったのに対し、建設業の「生産労働者」は417万円、建設業全体でも466万円と依然低いことが分かった。設計労務単価の上昇率と比べると賃金の直近の伸びも緩やかであり、元下・下下取引の中で賃金原資となる労務費の確実な行き渡りも必要だ。

年収額は「所定内給与額」と「年間賞与その他特別給与額」を足し合わせ算出した。建設業の生産労働者は、建設業の▽建設・採掘従事者▽生産工程従事者▽輸送・機械運転従事者-を加重平均し賃金を推計。建設業全体は、それ以外の管理や事務、技術労働者の賃金を含めた上で、総務省の「労働力調査」に基づく労働者数で加重平均し推計した。

賃金構造基本統計調査の公表ベースで建設業全体の年収額は22年に500万円で全産業を上回る。ただ同調査は10人以上の常用労働者を雇用する事業所が対象で、小規模事業者の従業員や一人親方など多くの技能者の賃金実態が反映されていない。国交省が労働力調査に基づく技能者の割合を加味し推計し直すと数十万円低い水準となった。

建設業の生産労働者の年収額は12年から22年にかけ十数%上昇したが、その間に設計労務単価は50%以上伸びた。設計労務単価は公共工事に従事する技能者の賃金実態調査をベースにしており、民間工事の実情を十分に反映できていないとはいえ、最終的に技能者に行き渡る賃金をさらに引き上げなければ今後の単価上昇も望めなくなる。

斉藤鉄夫国交相は新単価を発表した16日の会見で「まだ全産業平均に追い付いていない」と指摘し、新単価に基づく現場の賃上げがさらなる単価上昇につながる好循環の実現を改めて呼び掛けた。今国会では適正な労務費の行き渡りを担保するための建設業法の改正案の提出も予定。実際の賃金水準を全産業並みに引き上げるため手を尽くす。

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