2024/03/19 国交省/安衛経費の見積書明示を労務費・法定福利費とセットで推進、夏に実態調査

【建設工業新聞 3月 18日 1面記事掲載】

国土交通省は建設工事で安全衛生対策の関係経費が適切に支払われるよう、元下間の経費負担の実態調査や発注者も視野に入れた広報活動に力を入れる。今国会に提出した建設業法などの改正案で適正な労務費や法定福利費の確保を目指す規制を強化することを念頭に、安全衛生経費も同じような位置付けで適正額の確保が求められることを周知していく考え。労務費や法定福利費とセットで見積書に内訳明示する取り組みを推進し、建設業者らの対応を継続的に追跡調査する。

学識者や建設業団体の実務者らで構成する「安全衛生対策項目の確認表及び標準見積書に関するWG」の会合を14日に開き、安全衛生経費の認知度向上を目指す戦略的広報や建設業者が対象の支払い実態調査の方向性を示した。

戦略的広報は厚生労働省や関係団体と連携。4月から現場で本足場の使用を原則義務化するなど改正労働安全衛生規則(安衛則)の内容と併せて建設業者や官民の発注者、一人親方、エンドユーザーなど立場の違いに合わせたリーフレットなどを順次作成する。

実態調査は法定福利費の確保などに関する既存調査の内容を拡充する形で夏ごろに行う。許可業者のうち4万者にアンケート票を送付。元請、下請それぞれの立場で安全衛生対策の実施分担や費用負担、関係経費の見積書への明示状況などを確認する。これとは別に専門工事業団体には対策項目の「確認表」や関係経費を内訳明示する「標準見積書」の作成状況を随時フォローアップする。

会合では、特に住宅などの民間工事で発注者やエンドユーザーに経費負担の理解が必要との訴えが相次いだ。重層下請構造などを要因に工期途中で追加経費が必要になるケースも想定され、国交省が積極的に設計変更対応に当たることで地方自治体などの模範となるよう求める声もあった。

蒔苗浩司官房審議官(不動産・建設経済局担当)は、業法改正案で著しく低い労務費などによる見積もり・契約の禁止を打ち出したことに触れ「安全衛生経費も建設工事従事者の安全、健康確保のために重要」と関連性を強調。WG座長の蟹澤宏剛芝浦工業大学教授も「(発注者の理解を得るため)総価一式の中に込み込みとするのではなく、安全衛生経費や法定福利費を自ら計算し表に出す。どちらも担い手を守るもの。安心して若い人に入ってきてもらうためにも大事だ」と訴えた。

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