2024/05/21 国交省/業法改正案の労務費規制「著しく低い」水準明示せず、下限張り付き誘発防ぐ

【建設工業新聞 5月 20日 1面記事掲載】

建設業法と公共工事入札契約適正化法(入契法)の一括改正案で新たに導入する労務費の見積もり・契約規制について、国土交通省は「著しく低い労務費」に該当するかどうか判断する水準を明示せず運用する方針を示した。具体的な数値として明示されれば、価格交渉の場面で下限に張り付くような労務費の妥結を誘発する恐れがあるため。契約当事者の予見可能性を高める観点でも、違反行為の事例集を作成するなど一定の目安を設定する方向で今後検討する。

改正法案の実質的な審議が17日の衆院国交委員会で始まった。自民党の中村裕之議員、公明党の国重徹議員が質問に立ち、国が「労務費に関する基準(標準労務費)」を示すことによる技能者の処遇改善などに期待しつつ、主に法規制の実効性を確保する方策を国交省に求めた。

新たに創設するルールでは標準労務費を著しく下回る見積もり・契約を禁止し、違反した発注者を勧告・公表、建設業者を指導・監督処分とする。国交省は労務費の原資の確保が価格転嫁の浸透にも左右されることを挙げ、違反を判断する具体的な数値を示す難しさを説明。斉藤鉄夫国交相は「どう目安を設定し共有するか検討する」と述べた上で「これにより制度の統一的な運用を確保し、適正な労務費が計上されていない契約の是正措置の実効性を確保する」と話した。

国交省は標準労務費の設定がかえって賃上げの足かせにならないよう、市況に合わせて定期的に改定する考えも示した。それでも反映しきれない急激な市況変動への対応方策も含め、法改正後に設置する中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループで議論する。

資材高騰などに伴う価格転嫁を円滑化するため、受注者には「恐れ(リスク)情報」を注文者に事前通知する義務を新たに課す。国交省は受注者の過度な負担とならないよう、契約後の協議の円滑化という目的に沿った情報提供の在り方をガイドラインで示す方針。

契約後の協議に誠実に応じる注文者の努力義務について、両議員から実効性を疑問視する声もあった。国交省は民間工事の6割で契約変更条項がない実態を説明。一足飛びの義務化で現場の混乱を招かないよう、まずは当事者同士が協議のテーブルに着くよう努力義務で現状の改善を目指すことに理解を求めた。

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