2024/07/04 国交省/賃金支払いの確認方法検討、直轄工事で試行へ下請含めデータ提出

【建設工業新聞 7月 4日 1面記事掲載】

国土交通省は建設工事の発注者から支払われた労務費相当額が現場の技能者まで適切に行き渡り、実際に賃金として支払われたかどうか確認する方法の検討に乗り出す。国が示す「労務費に関する基準(標準労務費)」を著しく下回る見積もり・契約を禁止する改正建設業法に基づく新たなルールに実効性を持たせる方策の一環。2024年度から直轄工事で賃金支払い状況の確認を試行的に実施し、賃金データを受注側から収集する方法や行政側が金額の妥当性を判断する方法などを検証する。

改正業法では受発注者間と元下間で適正な労務費を行き渡らせる規制措置を設けたが、最終的な賃金の支払いまではカバーしておらず、法律上は技能者の処遇確保を建設業者に努力義務化したにとどまる。

中央建設業審議会(中建審)・社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会が23年9月にまとめた提言では、最終的な行き渡りを担保する契約上の取り決めとして適正な賃金支払いを当事者間で約束する「表明保証」や賃金開示の合意に関する条項を標準約款に追加するよう提案している。

提言ではまず公共工事で受注側による賃金開示と行政側による実態把握の取り組みを検討すべきだとしており、その内容を直轄工事での試行という形で具体化した。

試行では受注側の元請と下請(2次以降も含む)に、直接雇用する技能者の賃金や現場従事期間のデータを各地域の建設業を所管する地方整備局建政部に提出してもらう。行政側では積算から想定される賃金と収集したデータを比較し、その差異の程度を確認する。

試行対象工事は入札公告時に特記仕様書で明示する。下請契約でも同様に試行対象と明示してもらう。試行を通じ確認書類の提出方法・時期などを検証。行政側では収集データを技能者の経験年数や資格などの情報と照合し、技能に応じた賃金の支払いを確認する方法も検討する。

検証結果を踏まえ確認作業を簡便にするシステムの構築も視野に入れる。この試行と、契約当事者間で表明保証する取り組みの試行を連動させることも検討する。

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