2024/08/21 改正業法・入契法の運用の方向性・1/労務費規制、「警告事例集」で違反周知

【建設工業新聞 8月 21日 1面記事掲載】

国土交通省は「第3次担い手3法」の説明会を全国各地で順次開いている。改正建設業法・公共工事入札契約適正化法(入契法)では「労務費に関する基準(標準労務費)」を大きく下回る見積もり・契約の禁止や価格転嫁の協議円滑化措置、工期ダンピング対策の強化などを新たに講じる。説明会では各規定の施行に向け、具体的な運用の方向性を明らかにした。主に建設業者の立場で新たな法規制にどう対応すべきか、複数のテーマに分けて解説する。

賃金原資となる労務費の確保と行き渡りに向けた新たな規制措置の導入が改正業法の最大のポイント。中央建設業審議会が作成・勧告する標準労務費をベースとした見積もり・契約規制を2025年12月までに施行する。標準労務費を大きく下回る「著しく低い労務費」による見積もり提出や見積もり変更依頼を禁止し、民間発注者などを含む建設取引の注文者と受注者の双方に規制の網を掛ける。

国交省は「著しく低い労務費」の判断基準を具体的な数値として対外的に明示しない方向だ。例えば標準労務費からマイナス10%などと下限値を示すと、そこに実際に取引される労務費が張り付く恐れがある。そこで取引当事者の判断の目安として違反が疑われる悪質なケースなどの「警告事例集」を作成し周知する。

法規制の実効性を高めるため、警告事例集には違反となる行為事例をより踏み込んだ形で示すことになりそうだ。実際の違反事例などを追って加えることも想定。一般的なガイドラインよりも具体性を持った記載内容とし、取引当事者が不適切な行為を予見可能とする。一方、施行後の厳格な取り締まりが現場の混乱に発展しないよう柔軟に運用する姿勢も示す。

この規制措置は見積書の作成・調整という契約前の「プロセス」を縛るルールとなる。まずは受注者に工事種別ごとの労務費や材料費を内訳明示した「材料費等記載見積書」を作成するよう努力義務を課す。これを取っ掛かりに、注文者には交付された見積書の内容を考慮する努力義務が生じる。この過程で労務費などの受注者による廉売行為や注文者による買いたたき行為を禁じる。

法定福利費など省令で別途定める「適正な施工確保に不可欠な経費」も材料費等記載見積書に内訳明示する事項と定め、労務費や材料費に加えて見積もり段階で規制対象とする予定だ。

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