2024/08/22 改正業法・入契法の運用の方向性・2/原価割れ契約、より精緻に判断可能に

【建設工業新聞 8月 22日 2面記事掲載】

改正建設業法では、これまで注文者に対象を限っていた「不当に低い請負代金の禁止」に条項を追加する形で、総価での原価割れ契約の禁止を受注者にも導入した。総価の請負代金という契約段階の規制を強化するとともに、労務費を主な対象とした見積もり段階の規制をセットで講じることで、労務費の圧縮を伴う価格ダンピングに歯止めを掛ける。

不当に低い請負代金を禁止する従前の規定は、独占禁止法の「優越的地位の乱用」の禁止規定にならって注文者による取引上の地位の不当利用を前提とする。行政権限のすみ分けを背景に、注文者の建設業者が違反した場合、独禁法を所管する公正取引委員会への「措置請求」で対応する流れとなる。発注者が違反した場合、国土交通相などから勧告・公表が可能だが、対象は公共発注者に限られ、民間発注者は規制から除外されていた。

改正業法ではこの規定をそのまま残す。その上で、建設取引のあらゆる関係者をターゲットに建設業行政の立場から取引適正化を図る観点から、業法上のこれまで欠けていた部分を補完する形で新たな規制の枠組みを追加した。

建設業者は総価での原価割れ契約と「著しく低い労務費」の見積もり提出・変更依頼の両方で規制され、違反すれば指導・監督処分を受ける。労務費の見積もり規制は公共工事と民間工事を問わず取引関係者全体に掛かる規制となり、民間発注者もカバーする。違反して契約した発注者には国交相などが勧告・公表の措置を取る。

受注者に禁止する総価での原価割れ契約は、労務費や材料費の内訳額で廉売行為が認められなくても、ほかの経費を削るなどしてトータルの請負額が著しく低い場合に適用することを想定している。

原価割れに該当するかどうかは同種工事の実績などから算定し判断する。以前から変わらない判断基準となるが、過去の運用で個別案件を対象に措置した実例はない。今後は原価算定に「労務費に関する基準(標準労務費)」を組み込むことが可能になり、原価割れの判断基準がより精緻になるため実効性が高まるとみられる。

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