2024/10/17 手形サイト、60日以内は依然3~4割/11月から法違反の基準変更

【建設工業新聞 10月 17日 1面記事掲載】

建設工事の下請代金などの支払いに用いられる約束手形の支払い期間(サイト)が60日を超える場合、「割引困難な手形」に該当するとして下請代金支払遅延等防止法(下請法)や建設業法に違反する恐れがあるとする運用が11月1日に始まる。国土交通省や保証会社の調査によると、振り出し側の建設会社がサイトを60日以内にしている割合は3~4割。直近でも目立った改善は見られず、従来慣行の見直しが必要になる。

下請法で指導対象とする割引困難な手形のサイトの基準が現行の120日から60日に短縮される。下請法の対象業種から除外されている建設工事の下請負でも、この運用変更を踏襲。国交省は「建設業法令順守ガイドライン」を先月改定し、元請が特定建設業者であり下請が資本金4000万円未満の一般建設業者の場合、サイトが60日超の手形で下請代金を支払う行為が業法違反となる恐れがあると明確に示した。

北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社が16日に発表した7~9月期の建設業景況調査によると、支払手形の平均サイトを「60日以内」と回答した建設会社は31・4%。4~6月期から1・1ポイント上昇したが、まだ低水準にある。

主体とする工事業種別に60日以内の回答割合を見ると▽土木=38・7%▽建築=30・5%▽土木・建築=33・6%▽設備=17・4%。企業規模が大きいほど回答割合が高まる傾向がある。

国交省の下請取引等実態調査(元下調査)では23年6月末までの取引実態としてサイトを60日以内としている割合が37・6%。今後60日以内とする予定(検討中を含む)は40・3%だった。60日以内とする予定がない場合、その理由は「慣例」が過半数を占める。

□下請債権保全支援事業、当面は60日超も保証□

国土交通省は「下請債権保全支援事業」に関する手形の取り扱いについて建設業団体らに通知した。サイトが60日を超える場合も当面は債権の保証・買い取りの対象とする。現時点でも相当程度の手形サイトが60日を超えて設定されており、同事業の目的が手形を受け取る側の下請会社の保護であることに配慮する。

同事業は下請が元請に対して持つ債権の支払いをファクタリング会社が保証し、元請からの債権回収を確実にする仕組み。下請がファクタリング会社に支払う保証料の一部を建設業振興基金が助成するなどしている。保証・買い取りの対象とする手形のサイトは今後の取引実態を踏まえ適切な時期に60日以内とする予定。

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