2024/10/24 国土強靱化推進会議/過去の災害の課題確認、建設分野の担い手確保・育成重要

【建設工業新聞 10月 24日 1面記事掲載】

内閣官房の国土強靱化推進会議(議長・小林潔司京都大学名誉教授)は23日、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の後継となる「国土強靱化実施中期計画」の策定に当たり、過去に発生した災害に対する課題や建設分野の現状を確認した。会合で河野俊嗣委員(宮崎県知事)は、南海トラフ地震臨時情報が発表された8月の日向灘を震源とする地震や台風10号を踏まえ、物価・人件費上昇を踏まえた予算確保を求めた。

同会議は実施中期計画の策定に向け、国土強靱化を巡る取り組みの評価を行っている。同日の会合では豪雨と大雪での課題として、事務局が都道府県などに技術職員の確保を要請することや、高度な専門技術を持つ主体とテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の連携、ハザードマップの作成支援などを挙げた。除排雪資機材の購入支援と建設業の処遇改善・働き方改革の継続なども必要だとした。地震・津波の課題は、政府による能登半島地震の検証を踏まえて整理する。

ハザードマップを巡っては、認知が進みながら避難情報を正しく理解している人が少ない調査結果がある。会合に参加した森昌文首相補佐官(国土強靱化推進本部長代理)は1、2級河川以外の水害も目立つことから「ハザードマップの作り方も変えていく必要がある」と指摘した。

建設分野の現状としては、就業者数がピーク時から約30%減少しており「将来の担い手確保・育成は極めて重要な課題」とし、賃上げと生産性向上による施工能力の確保が必要とされた。国土交通省は公共事業関係費の執行が順調に進み、不要率が1%程度にとどまっていることや、入札の不調・不落の下降傾向、労働者不足率の減少といった状況を報告した。

委員からは、i-ConstructionによってICT分野への就職を目指す学生に建設業を向いてもらうなど、担い手の裾野を広げるよう求める意見が出た。

会合の冒頭、河野委員は東九州自動車道が宮崎県沿岸の国道220号の代替路として機能するなど、国土強靱化の観点から道路整備の効果を説明した。物価高、人件費上昇を踏まえ「これまでと同じ額では事業量が減る」とも指摘した。

実施中期計画は24年度中の閣議決定を求める意見が地方自治体や産業団体などから出ている。同会議は評価に続いて、計画の策定方針案の検討に入る。

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