2025/08/06 建設業の未来-日建連「新長期ビジョン2・0」・5/信頼の土台築く共通指針に

【建設工業新聞 08月 06日 1面記事掲載】

建設業の持続可能性を担保するためには、働き方改革の推進、生産性向上、処遇改善といった取り組みに加え、コンプライアンスの徹底などが求められる。産業や企業の信頼を支える強固な土台を築かなければいけない。

日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の新長期ビジョンは、社会の中で建設業が果たすべき役割と姿を描くと同時に、持続性を担保するため▽コンプライアンスの徹底▽安全対策の徹底▽建設業の魅力の発信-の3本柱を掲げた。

施工不良や法令違反がひとたび明らかになれば、企業の信用は失墜し業界全体の評価にも影を落とす。ダンピング受注は工事・業務の品質低下、協力会社・技能労働者へのしわ寄せなどを招き、建設業界全体の健全な発展を阻害する恐れがある。

元請企業や協力会社を含め、すべての関係者が公正な取引を心掛け適正価格での受注に努めることが、ひいては社会的信頼の獲得につながる。新長期ビジョンでは、法令順守を表層的に捉えるのではなく、業界文化として定着させることの重要性を指摘している。

安全対策の徹底も信頼の根幹をなす。建設業は他産業と比べ労働災害が多く、ゼロ災害達成への取り組みに終わりはない。

建設現場にロボットや自動化技術の導入が進むと、重機や仮設機材の安全設計だけでなく、人と機械の協働環境の整備も欠かせない。遠隔操作での施工も実用化されているが、最後は人の手での作業になる。日建連は今後の現場の姿を見据え、死傷病者ゼロを目指す先進的な職場環境の整備を進める。

外国人労働者の増加を背景に、言語や文化の違いを乗り越えるための教育支援やピクトグラム、分かりやすい日本語での対応も求められる。猛暑や高齢化に伴う健康管理も新たな課題として浮上しており、現場では総合的なリスクマネジメントが必須となる。

新長期ビジョンでは「建設業の本来の魅力を再定義した上で、積極的に発信することが重要だ」と指摘している。企業や団体がそれぞれに取り組むだけでなく、業界全体で社会へ魅力を語り掛けていく。新4K(給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる、かっこいい)の実現に向け情報発信の必要性を説く。

戦略的な広報戦略として、現場見学会などによるリアルな発信に加え、ユーチューブやインスタグラム、TikTok(ティックトック)といったSNSを積極的に活用。さまざまなツールを用いて発信力を強化し、社会に建設業の魅力を届ける。

宮本会長は「長期ビジョンが共通指針となり、建設業に関わる多くの関係者にとって手掛かりになってほしい」と期待を示す。新しい長期ビジョンには新4K実現に向けた施策が網羅されている。課題解決の先に理想となる建設業の姿が描けるか。業界の挑戦が続く。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る